保佐人の実務現場

保佐人というものの役割はどんなものでしょうか・・・?

『成年後見制度って?』の項目でお伝えさせていただいた、

成年後見申立の際の、診断書のチェクボックスでイメージをつかむのが一番分かりよいかと思います。


□ 自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である。 (保佐相当) 

と書いてあります。『 常に 』 という所が、ポイントになります。

 

保佐申立をされる方は、多くは軽度の認知症の方や、何らかの精神上の障がいを抱えておられる方 が多いような印象をうけます。そして、この 常に援助 というものが、思いのほか(援助にかかわる時間や労力という意味で)大変な部分にもなります。

 

なぜなら、『財産の管理や処分ができない』ご状況ではなく、『常に援助が必要』なご状況であるからです。

軽度の認知症の方や、なんらかの障がいを抱えておられる方が、ご家族におられるご世帯の状況を

考えて見られたらわかるかもしれません。

 

またこのようなケースの場合に、保佐制度等の成年後見制度を知らない、あるいは利用されていないがために、ご家族や同世帯の方に、大きな負荷がかかってしまっている様な事例もよくあります。

 

例えば、

知らない間に通販で商品を買ってしまっている。

訪問販売で、リフォームや雨漏り対策等、あまり必要もないように思われる工事を次から次へとしている。

本人は彼女だといっているのに、毎回デートの度に高額の商品をローンで買わされている。

法的な問題が絡んでくるケースです。

この様な際に、事前に保佐人の仕組みをつくっておくのと、そうしないのとでは、

その後の後始末の手間が大きく変わります。

 

保佐人等の選任をされておかれた場合、

保佐人からの『取消権』を行使されていかれればよい形になります。

 

保佐人等の選任をされておられない場合、

保佐人からの取消はそもそも存在しないので、ご自身でこの商品の購入をやめます という事を、原則として主張していかないといけません。 クーリングオフを使う事や、契約の無効や取消しをしていかなければなりません。そもそも契約自体もちゃんとできない状態であった事などは、原則として、こちらが証明(裁判の場合は、こちらが立証)していかなければなりません。

また、このような状態が発覚してから、成年後見制度を利用して、保佐人を選任されるケースもありますが、やはり時間がかかっていまうのと、保佐人が選ばれるまでは、上のような対応をせざるを得ない事になってしまいます。

 

以上のように見て頂くと、事前に保佐人を選任されておかれる様にされたほうが、

随分と手間や時間を節約でき、そして不安といったものを解消されることが出来るかと思います。

 

また、保佐人として、大きく意識をさせて頂いたほうがよいと個人的に感じますのは、

他項目でも述べさせていただいている、ベストインタレスト(best interests)という言葉の示す方向性です。

 

周りがいくら良いと思っていようが、正解とその場の方々が全員判断されようが、

ご本人さんにとってそれが、最善の正解 であるのならば、それが一番大切である。

という意識です。

ベストインタレストの日本訳は、ご本人さんの最善の利益 というそうですが、

保佐人として、ご本人さん(被保佐人)と関わりをさせて頂く際に、この言葉が実現できていったなら、

本当に素晴らしいものになっていかれると思います。

 

 

障がい者の方々の、自立生活を支援されておられるグループホーム等において、

このベストインタレストという考え方を、大いに反映されておらえるような素晴らしい所を、

ある研修会の際に、映像で拝見させて頂いたことがありました。

 

 

自閉症を抱えておられる方でしたが、

たった、自分でコップに牛乳を入れて、牛乳をのむ。 という行為にしましても、

通常はなかなかうまくいかないという内容でした。

 

この ベストインタレスト という目線を徹頭徹尾、環境として提供をしてあげると、

普通であればなかなかできない(自分で牛乳を飲む行為までいかないのに、

見事にご自身で牛乳を飲む事が出来るようになっていました。

 

具体的な工夫は、

毎回使うコップを置く位置、冷蔵庫の中の牛乳のメーカー、牛乳を置く位置、

飲んだ後にコップを片づけるところ(流し台の一つの決まった場所)、等々を全く同じように整えてあると、

きちんと自分で牛乳を飲むことができる。という様な内容でした。

 

ご本人さんの ベストインタレスト は、

毎回、同じ場所に同じものがあって、直すところもキチンと同じ場所があって、という所であったのです。

もしもコップの色が違ってしまっていたり、冷蔵庫の中の牛乳のメーカーや置いてある場所が変わると、

その段階で、行動が止まってしまって、牛乳を自分で飲む。という所まで行動が続かなかったのです。



自分の考えている常識や、物事や考えやイメージといったものに張り付けている「言葉」というラベルが、

全くあてにならないような気がして、とてもこの話には感動した覚えがありました。

 

 

バリアフリー社会や、環境にやさしい社会、人にやさしい社会 とかいろいろな言葉がありますが、

このベストインタレストという言葉は、本当に大きな一つのキーワードになっていっていると、

その自閉症の方の映像を見させていただいて、気づかせて頂いた事になります。

 

では自分にとって、ベストインタレスト(ご本人さんの最善の利益)ってなんなんやろうか・・・?

なんだか、何かにこだわっている小さい自分自身が見えてくるような気がして、

少し楽しい気分になってきますね。

 

 

保佐人という業務は、大変な業務(法的な意味合いで)とも思うかもしれませんが、

このような話も一つの方向舵にされて、関わりをさせていただくこともよいかもしれません。

皆様のご健闘をお祈ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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